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第2回

三輪:はい。どうもありがとうございます。まだ、時間はたっぷりありますので、全然違う話をしましょうか。今話題になった科目は全部理系の科目ばかりだと思うんです。しかし、系登録や卒業要件、またあるいは今年の新入生からの履修登録数の制限ということを考えるときに、いわゆる文系科目や外国語科目も関わってきますよね。そういったことについて、自分がどう思っていたかということも踏まえつつ、何か学生に言っておきたいことがあればよろしくお願いします。

福田:以前、語学は2か国語を2年間みっちりやることになっていまして、私は第二外国語はフランス語を取りました。今から思うとなんでフランス語をとったのかはちょっとよく分かりませんが、ドイツ語よりは面白そうだなと思っていました。ただ私、そのドイツ語も、第三外国語として取ろうとしたんです。辞書まで買ったんです。でも、とてもそこまで手が回らなかったので辞めてしまいましたが。フランス語は、できればなんとか物になればなあと思っていたのですが、結局2年間ではなかなか物にはなりませんでした。今、第二外国語はあまりやらなくてもいいことになっていますが、やってみるとけっこう面白いので、それはそれでいいんじゃないかと思います。語学の単位数を減らしたのはいいのか悪いのかよく分からないなという気がします。英語については、今はもう少し実用的な英語を教えてもらえるのかもしれませんが、私の時はシェークスピアなどを読んでいて、昔の英語が出てきたりで非常に大変でした。それよりは第2外国語の方が新鮮でいろいろ面白かったです。役に立つからやるというよりは、なんとなく面白そうだなと少し興味の持てる授業を聞きに行くのがいいんじゃないかなと思います。「単位を取らないといけない」というのだと、自分自身も辛いですよね。講義は「面白いんで行きます」というような風に選んだ方がいいと思います。まあ、アドバイスとしてはそういうことです。

平野:それでは、多少違うことを言いましょうか。英語のことなんですが、僕が高校1年生くらいのときに、親に「知り合いがオーストラリアにいるから冬休みの間ちょっと行って来い」と言われたんです。その知り合いは実は日本語も話せるというので行ったんですが、親はその人に日本語を話すなと言っていたらしくて、行ってから辛かったです。夜にベッドに入るときに「ああ、今日もなんとか終わった」という感じでした。でも、そういうことをしているとそのうちけっこう慣れてきました。そういえば、大学生の時に親父が外国人の若い女の子を家に呼んで来て「お前面倒見ろ」って言ったこともありました。その子と2人で旅行にまで行かせるんです。その頃は東京に居たんですが、鎌倉とか日光とかを案内しました。出雲大社にまで行きましたが、どうしてああいうことになったんだか分かりません。でもまあ、そういうことをしているとけっこう慣れて来て英語を使えるようになりました。ともかく、実際に使うということが大切だと思います。留学とかをすると使えるようになりますし。だから、授業だけではないと思うんです。授業も、いろんなものがありますよね。私自身が大学の時に受けた2つの授業が非常に対照的でした。一人の英語教師はすごく嫌なやつで、「教師も当たり外れがあるんだな」と思いました。文法とか発音に関していちいちうるさくて、ネチネチネチネチやるもんだから、ほとんど進みませんでした。でも、もう一人の教師は、小田島雄志というシェークスピア研究で有名な先生で、あの人の話はむちゃくちゃ面白かったです。シェークスピアとは関係ない、ある本を読んでくれたんですが、非常に楽しかったです。それから、第二外国語に対しては、僕はけっこう否定的です。無理にやることないんじゃないかなと実は思っています。私自身は、これも親父が「ロシア語をとるといい」と言ったので、ロシア語をとったんです。だけどこれが酷くて、活用が6個もあって全然覚えられなかった。文法はしょうがないから覚えたんですけど、教科書の方は難しいからやっぱり進みませんでした。本当に進まないので訳本を見ながらやっていたら、文章を全部日本語で覚えちゃったので試験はパーフェクトでできました。でも実際は全然使えません。時々ロシア語が聞こえてくると「ああ、ロシア語の発音だ」というのが分かるくらいです。それから、さらに問題になったことがありました。我々の頃は、大学院入試の時に第二外国語の試験もありましたよね。私自身は、理学系から医学部に移ったんですが、医学部はロシア語での受験を認めていなかったんです。ドイツ語をやらなくちゃいけなくなって、自分で勉強して受ける羽目になりました。ただ、これもやっぱり身にならないですね。ドイツに行った時に、お店で試しにドイツ語でちょっと話してみたら、その店員さんが「ドイツ語分かるのか」と思ったらしくて、延々とドイツ語で話し出したので困りました。「これは使っちゃいかん」と思った記憶があります。だから、第二外国語に関してはけっこう否定的で、好きな人がやればいいとは思いますが、無理にやる必要はないんじゃないかなと思っています。一方で私は、人文系の科目に関してはそれなりにきちんととった方がいいと思っています。世間を超越した先生として生きていく手もあるでしょうが、僕自身はやっぱり新聞やなんかを見ています。一般の凡人にとっては、世の中の流れというのは知ってて決して悪いことはないと思います。政治経済を含めた全体の状況を知ることも大事ですし、外国の人を案内する時は歴史などを思い出しながらやるわけですから、サイエンス以外のことも知っておくといいですよね。それに、この世界でずっと研究者として生きていけるかどうかも分からないという意味では、転職をはかった時に、世の中の動きやそれに対する一般の動きに対する知識や、それぞれの状況でどう対応すべきかということに関する力を育てておくということは、決して悪いことではないと思います。そういう講義が十分用意されてるかどうかは分かりませんが、タイトルやシラバスを見ていると、いろいろと面白そうだなと思う講義がありますよね。京大は、すごく多くの科目が用意されているという意味で、やっぱり充実していると思います。「単位をとにかく取る」というんじゃなくて、もうちょっと積極的な気持ちで人文社会系の科目も取ってくれたらなと思います。

有賀:もうずいぶん話が出たので、あんまり言うことはないんですけども。人文社会について、自分のことを少しお話しします。大学に入って、多分人文社会の科目を8個くらいとらなきゃいけなかったと思うんですが、聞くとけっこう面白かったです。面白くないのも多分あるので、自分で面白くないと思うのを無理に取る必要はないとは思うんですけど。世界は数学だけでできているわけでもないし、物理だけでできているわけでもなくて、人間が生きていろいろ活動していることで世界があるわけです。そういう人間の世界により近い話が聞けるというのが面白かったです。そんなに一生懸命勉強しなくても単位は取れるんだけど、やっぱり話を聞くというのは面白くて。もう三十数年前になりますが、そういった話は、まだけっこう覚えています。ちょっと挙げると、「文化人類学」という科目の「焼き畑農業はいつ始まった」とかいうような話とか、「人文地理」という科目で東南アジアが専門の先生が各国の地理の話をして最後の30分くらいはスライドを見せてくれるというのが非常に面白かったです。なんか、理屈が通っているんですよ。地理って単に記述的な学問かと思っていたけれども、いろんな脈絡というか論理があるので、非常に面白かったです。あと、「法律っていうのはどうせつまんないだろう」と思って試しに取ってみた「法学」という科目で、法律の考え方を非常に新鮮に感じました。たとえば「善意の第三者」という考え方とか。泥棒した人が盗んだ物を第三者に売りとばしたとき、第三者がそれを盗んだ物だと知らなければ、その人はそれを返さなくていいということなんです。毎回、そういった話をされたんですが、「こういう論理もあるのか」という感じで、非常に面白かったです。その他、話の方はほとんど忘れていますが「国際関係論」というのをとったことも覚えています。世界を見るときにいろんな切り口があるな、と思って、話を聞いているだけでわりと楽しかったです。それから、これは大事な事だから言っておきますが、話を聞くときは教室の一番前で聞くのが一番いいです。後ろのほうで聞いているとどうしても気が散ります。遠くてちょっと聞こえにくいので、それでちょっと注意が別のほうに逸れて、話の接ぎ穂が分からなくなったりしてついていけなくなる。先生の目の前で聞いていると他に意識の逃げようがないので、集中しようと思わなくても集中して聞けます。そうすると、面白い話の先生の講義は非常に面白く聞けます。